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  • 大井駿

シューマン: ピアノ四重奏曲 作品47

最終更新: 2018年8月7日

才気と活気に溢れるこの作品は、特に2つの中間楽章(第2、3楽章)が実に素晴らしく魅力的で、美しい音楽に富み、飛び交う豊かな想像力をしっかり併せ持っています。きっとどこで演奏されても大きな拍手を持って受け入れられるでしょう、まさに今回のコンサートでのように。

原文: ein Stück voll Geist und Leben, das, namentlich in den beiden Mittelsätzen höchst ansprechend und lieblich, mit hohem Schwunge der Phantasie eine Fülle schöner musikalischer Gedanken verbindet und gewiss überall, wie hier, mit grossem Beifalle aufgenommen werden wird.

出典: Allgemeine Musikalische Zeitung (9. Dezember 1844)

(初演翌日、音楽時報に書かれた批評文)



  • ロベルト・シューマン

書店の息子として育ったロベルト・シューマンは、家にある本を毎日貪り読み、気が向いたら一日中ピアノを弾き、たまに葉巻きたばこ(シガー)をずっと吸う…というようにまさに凝り性な生活を送っていました。

様々なものに情熱を傾ける性格だったシューマンはライプツィヒ大学法学部へ入学します。

最初は勉強を楽しんでいましたが、大学の学生たちと室内楽を楽しんでいるうちに勉強への熱意が冷めてしまいます…

どうにか法学の勉強と音楽を両立できないか、と模索し、法学部の教授で音楽家だったA.F.J.ティボーという人がいるハイデルベルク大学法学部へ転校します。


それでも勉強ははかどらず、毎日居酒屋で友人と飲み歩く生活に入り浸っていました。お金は減っていく一方…結局退学しました。


シューマンはその後ライプツィヒへ引っ越し、有名なピアノ教師だったフリードリヒ・ヴィークの元でピアニストを目指すべく、本格的にピアノを勉強します。

一年経った頃、彼の右手が動かなくなります。

そんなシューマンはピアニストの道を諦め、作曲家としての人生を決意します。



  • ピアノ四重奏曲 作品47

手の故障後、シューマンは自分の先生ヴィークの娘クララと結婚します。

このとき、先生は猛反対したそうで、裁判まで行なっています…

しかしシューマンの結婚相手のクララ、すごいピアニストでした。

見たものはなんでも弾けて、かつ曲は全て暗譜で弾いたそうです。

(今現在でもピアノのソロ曲を曲を暗譜で演奏する慣習があるのは、良くも悪くもクララのせいです)


結婚してからは、自分のそばになんでも弾けるピアニストがいたので、シューマンはある意味で自分のやりたい放題に作曲できたのです。

そんな中シューマンの発想力や想像力は爆発。

ピアノ曲だけではなく交響曲、歌曲をポンポンと生み出し、室内楽でも多くの名曲を書き上げます。まさにその最中である1842年、ピアノ四重奏曲 作品47 を作曲しました。


このとき調子が右肩上がりだったシューマンはこの曲を1ヶ月足らずで書きました。

1844年にライプツィヒで初演されます。もちろんこの時にピアノを弾いたのはクララでした。初演は大変好評で、新聞でも絶賛されました(記事冒頭参照)


短期間で書き上げられたとは思えないような綿密な構造を持つこの曲、その秘密を次の章で少し紹介します。



  • 伏線

ピアノ四重奏曲 作品47 は4楽章構成ですが、この曲は全楽章がそれぞれ非常に強いつながりを持っています。

キーワードは「伏線」です。

第1楽章の冒頭、おぼろげに提示されるゆったりとした旋律。序奏で演奏されるこの旋律が…


開始13小節目にピアノに、急速なテンポで第一主題として登場します!




次に第2楽章。

こちらも急速な楽章で忙しなく動き回りますが、突然動きが消え、ゆったりとした曲調になります。その最初の2つのハーモニー…


続く第3楽章の冒頭のハーモニーにそのまま現れます!




そして第3楽章の終わりに出てくる、急に出現する謎の音形…


第4楽章の冒頭のテーマとして出てきます!



このように、まるで謎かけのように、前の楽章で次の楽章のテーマの伏線をたくさん張っているんです!


これだけではありません。

第4楽章のテーマは第1楽章のテーマを変形させたものなんです!

そして、このテーマ…なんとブラームスが交響曲第1番の第4楽章でほぼ形を変えずに使っています!(しかもブラームスはこの音形を何度もしつこく登場させています)


ちなみに勉強熱心なブラームスは特にこの曲にこだわりを持っていたようで、1863年にピアノ連弾版に編曲して出版しています。ただ音を移し替えたのではなく、ピアノ連弾としての良さがとても生かされている編曲です。

(先生がちょうどこの編曲の世界初録音をしています/amazon)



書き始めるとキリがないのでこの辺りにしておきましょう…

このように、シューマンのピアノ四重奏曲はユーモアに富んだ、とても面白い曲なのです。


150年前に書かれたとは思えないような生き生きとしたユーモアに、きっとあなたも頬を緩めてしまうでしょう!


©︎2018 Shun Oi

© 2018 by Shun Oi

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