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  • 大井駿

ミュライユ: 羅針儀海図より、「鐘を横切る葉」

Feuilles à travers les cloches, extrait de Portulan (1998)



  • ミュライユの生い立ち

トリスタン・ミュライユ (1947- )

Tristan Murail


1947年、フランス・ル=アーヴル出身。

詩人の父を持ち、兄弟3人はフランスで有名な作家である文学一家。フランス国立東洋言語文化研究所で古典アラブと北西部アフリカの文化を、パリ政治学院で経済科学を専攻し、それぞれ学位を取ったのちパリ国立高等音楽院で作曲をオリヴィエ・メシアンに師事。電子音楽に大きな興味を示し、リゲティなどを手本とした曲を作曲するようになる。ジェラール・グリゼーらと現代音楽アンサンブルを結成し、自分たちの音楽の実験的活動を行う。特にグリゼーとは同じスペクトル楽派に属す。ニューヨーク・コロンビア大学や、ザルツブルク・モーツァルテウム大学でも教鞭をとるほか、電子楽器オンド・マルトノ奏者としても活動している。



  • 曲の解説

楽譜の冒頭に描かれている、作曲者自身による曲の説明書きを引用します。


みなさんもお分かりのように、題名はドビュッシーの『葉ずえを渡る鐘の音(Cloches à travers les feuilles)』をひっくり返したものです。この曲を通してわれわれは農村の風景、葉っぱの様子、遠くから聞こえる鐘の音、静かなフランスの田園風景、または長い旅や冒険を終えて帰り着くところを描いたヴァトーの絵のようなシーンを想像します ——- しかし音の観点からすると、鐘と葉っぱとでは、”音”を持つ鐘が葉っぱよりも明らかに優勢なのです。そこで、鐘の響きを介することで、風によって激しく動く葉っぱたちのざわめきを感じ取るのです。風が吹く。嵐の予感。ピタリと止まった空の様子 ——- 雷雨がくるのだろうか。

この曲を第1番として作曲されている連作“羅針儀海図(Portulan)”は、彼の作曲途中の作品で、現在7曲が作曲されています(予定では9曲か10曲で完成)。それぞれの曲が彼の中で特別な意味を持った「場所」「旅」「物語」「美しい体験」を表現しています。

連作の題名は、彼の父であり、詩人であるジェラール・ミュライユの作品から転用したもので、これは彼が少年時代に非常に影響を受けた作品であると語っています。


  • 曲の構成

ピアノは鐘の音を表すべく、ダンパーペダルを終始踏み続けます。

フルートや弦楽器も特殊奏法をふんだんに用いることで、巧みに吹き荒れる風の音を模しています。さらにテンポは頻繁に揺れ動き、はたまた急に動きが止まってみることで穏やかではない空模様をよく表現しています。

後半部では緊張感が高まったところで動きが止まって残響が残り、鈍い衝撃音が何度もしつこく走ります。そのまままた強い風を思わせる音階、グリッサンドが演奏され、さらに鈍い衝撃音で曲が終わります。


©️2016 Shun Oi

© 2018 by Shun Oi

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